熊野古道の宿 霧の郷たかはら

熊野古道の宿 霧の郷たかはら

雲海を見下ろす「天空の宿」から熊野古道の魅力を発信

企業紹介

 世界遺産・熊野古道の中心地、「中辺路」エリアの中でも、とりわけ眺望が良いことで知られる高原地区に、2008年、オープン。世界中から訪れる人々を、小さい宿ならではの温かく親身なおもてなしで迎えています。  
 視界をさえぎるものが何もない標高300メートルの宿から見下ろす里山の棚田と熊野の山々の眺めは絶景。霧がかかる日には、幻想的で美しい「雲海」が眼下に広がります。
 宿のコンセプトは、「自然の力」と「出会いの場」。滞在中、からだと心をやさしくいたわってくれる熊野の自然の力を感じていただくため、紀州の天然木材でコーディネートした客室、地元の新鮮素材を使った郷土料理、地元の温泉水を薪で焚いたお風呂など、「オーガニック」と「地産地消」にこだわったサービスを提供しています。
 また、新しい旅の形態「ウーフ」への取組(後述)などを通して、旅行者、スタッフ、地元住民など、宿に集うさまざまな人が、国や言葉の壁を越えて交流し、学びあう場となっていることも、「霧の郷たかはら」ならではの魅力。
 2018年には、「トリップアドバイザー ホテルアワード」旅館部門・国内3位に認定されました。

人材活用・職場環境づくりへの取組

●「地元の活性化」と「高年齢者・女性の活躍」
 
お客さまに熊野古道の魅力を存分に味わっていただくためには、宿の発展だけでなく、この地域全体を活性化することが大切だと考え、地元の高年齢者や女性の方々を積極的に雇用し、宿の運営に参加してもらうことにしました。
 現在、料理長を務める女性社員と、温泉水の運搬を担当する男性社員は、ともに70代の地元住民。この2名を含め、地元の方々の知恵やパワーを宿の運営に活かしてもらうことで、この地域の食材の良さをフルに活かした料理を提供できたり、地元住民ならではの観光案内ができるなど、計り知れない効果が出ています。

 ●「Iターン」移住者の受入れと活躍推進
 地元の人材に加え、県外からの移住者も増えれば、地域の活性化にとって大きなプラスになると考え、「Iターン」移住者の雇用にも積極的に取り組んでいます。現在、県外から「Iターン」で中辺路に移住した社員が2名在籍し、マネージャーの役職を務めるなど、中心的な役割を担ってくれています。今後も、「Iターン」移住を希望する人に対し、魅力ある仕事と働きやすい職場環境を提供していきたいと思います。

●「やりがい」を生む持ち場担当制
 
仕事の内容面では、「手伝ってもらう」というレベルではなく、各自それぞれに責任のある「持ち場」をまかせるようにしています。そうすることで、皆が大きな「やりがい」をもって仕事に取り組むことができています。

●新しい旅の形態「ウーフ(WWOOF)」への取組
 
最近、特に力を入れているのが、労力と引き換えに無償で食事・宿泊場所を提供する「ウーフ(WWOOF)」の取組。「雇い、雇われる関係」ではなく、ボランティアとして、キッチンの補助、客室のそうじ、薪割り、観光ガイドなどを担当してもらい、その代わりに食事と宿泊場所を無償で提供しています。
 ウーフで宿に滞在する人、「ウーファー(WWOOFer)」は、取組開始から2年で120人に。「現地で体験できる旅」がトレンドになっていることもあり、海外からの旅行者を中心に人気を博しています。
 ウーフの取組は、ホスト側とウーファーの双方にメリットをもたらしています。ホスト側は、旅行経験が豊富なウーファーから、最新の旅のトレンドや旅行者のニーズを学ぶことができます。また、外国人のウーファーと頻繁に会話することで、日本人スタッフの外国語慣れにも貢献。さらに、世界中のウーファーはSNSなどでつながっているため、熊野古道や「たかはら」の口コミが短期間のうちに広がり、宿泊者の増加につながりました。
 他方、ウーファーにとっては、自分が関心を持っている地域、何かを学び吸収したいと思う地域に旅行者として出向き、無償でその目的を果たすことができるため、旅のチャンスと可能性が大きく広がるのが魅力。現在、「たかはら」には、日本食に関心をもち、日本の料理を学びたい外国人ウーファーが多く滞在しています。キッチンでは、外国人ウーファーが地元の50~70代の女性社員から「五味、五色、五法」という日本の食の神髄を教わる姿が日常の光景となっています。

社員の声

森本さん(料理長) 

 キッチンを担当しています。
 世界中から来てくださるお客さまに、熊野の良質で新鮮な食材を使ったお料理を味わっていただき、「おいしい!」と言っていただくのが何よりのよろこびです。ここで働くようになり、「生きがい」が1つ増えました。
 その日の朝に地元で採れた食材を使い、からだへのいたわりを大切にしたお料理をお出ししています。肉・卵・乳製品を使わない玄米菜食のメニュー、炒り玄米粥など、お客さまの好みや体調に合わせて、1膳1膳、心を込めて手作りのメニューを考えています。
 これからも、日本食の良さ、熊野の「食」の魅力を、少しでも多くの人にお伝えできるように、がんばっていきたいです。

今後に向けて

 オープンから10年。地元の方々、「Iターン」移住者、国内外からのウーファーなど、さまざまな背景をもつ人々に参加してもらい、皆の知恵を持ち寄ってお互いに学びあいながら、既成の概念にとらわれない「新しい旅のかたち」を目指して活動してきました。
 これからも、自由な発想と柔軟な思考で新しいものを吸収し、それを宿の運営や職場づくりに活かすことで、熊野古道の魅力アップとこの地域の活性化に貢献していきたいと思っています。

基本情報

事業内容 旅館、レストラン・カフェ
企業名 熊野古道の宿 霧の郷たかはら
創業 2008年
所在地 〒646-1416 和歌山県田辺市中辺路町高原826
TEL 0739-64-1900
FAX 同上
代表者 オーナー・プロデューサー 小竹 治安(しの じあん)
従業員数 14名
URL http://kirinosato-takahara.com/